逃げ足を、堪えるな。

運命という名の競走馬がおりました。
まだ幼かった私が、父親の肩越しに覗いた新聞の、その名前の下にはハッキリと、「逃げ」と書かれていたのを覚えています。 レースが始まり、ゲートが開くやいなや、100メートル走者のようなダッシュで一目散にターフを駆け抜けていった運命。 馬からも、人からも、そして自分の名前からも、逃げて、逃げて、逃げて…。 けれどやがて力尽き馬郡に飲みこまれると、最後には、必ず一人きりでゴールをくぐる時の、灰の燃え滓のようで表情を感じさせない、獣独特のあの瞳。

ベートーベン先生は言いました。
ジャジャジャ、ジャーン!運命の扉はこのように激しく叩かれる。 ジャジャジャ、ジャーン! …でもそうでしょうか。 そんなにけたたましい音を立てて運命がやってくるのなら、ドアに鍵を掛けて、その隙に二階の窓から逃げ出すこともできる。 運命っていうやつは、もっとひっそりと、クリスマスの晩の父親のように、いつの間にか部屋に入って来て、あっ、と気付いたときにはもう手遅れ、 後ろ手でドアに鍵を掛けてられてしまう。 抜き足、差し足。

だからきっと、運命はスニーカーを履いているんです。

DATA

2006年9月16日(土)~19日(火)
@千本桜ホール

【作・演出】
小野寺邦彦

【出演】
岩松毅、山本駿、赤城智貴、林純平、古賀慈猛、伊藤彩子、白石彩、南綾希子、桐村理恵、三輪真澄、露木妙、松田紀子

【スタッフ】
照明:志田順一、松川真理子、西海文野、 音響:佐川堅央、山口諒、 舞台美術:倉和範、勝浦彩乃、 衣装:江阪朋子、 宣伝美術:倉和範、 舞台監督:石辺涼子、 制作:黒鳥辰也、 協力:多摩美術大学「タマゲキ」

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