WORKS
上演作品
▼ダイナモロンド×ストランド
2007.6.15_17
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僕は空洞、想い零れる。
その時、君は、傷つき、疲れ果て、遠く南極の彼方から、砂浜へと打ち揚げられた一頭の鯨だった。満潮の海水に身を浸し、獣特有のガラス玉のような目で私を見上げた君は、やがてただ一言、休ませて欲しいと言った。 私は、君に言った。 夜の間に出発したほうが良い。朝になれば、近所の漁師があなたを見つけます。あなたの肉は、この冬の大変なご馳走になるのです。 君の虚ろなガラス玉の光が、ふと、常夜灯の優しい灯りに変わったような気がした。 大丈夫。朝になれば、引き潮が沖へと運んでくれるから。 そして君は眠った。潮が引き始めた頃、すでにガラス玉の目に戻っていた君は、沖へ帰ることは二度とできないであろう巨体を引きずって、それでも最後に一度、浜辺中に響き渡る声で嘶いた。 また会いましょう、いつかまた。ある晴れた日に、もう一度。 私には、その言葉が、悲鳴のように聞こえた。 |
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