WORKS
上演作品
▼ディアスポラ
2007.10.4_7
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追って来い、ヒトの影。
誰が知るだろう。サーカスの花形、空中ブランコのトップ・フライヤーが、万来の拍手と共に、真っ赤なスポット・ライトをその背に浴びたまさにその瞬間、少年が、螺旋の屋上から、その身を投げたことを。 誰が知るだろう。 二人のランナーが、凄まじいまでのデッド・ヒートを展開したトラック・レース。ゴール・テープの目前で崩れ落ち、意識を失った彼が実は周回遅れのランナーだったことを。 誰が知るだろう。 午後の授業を抜け出した少年が、真っ青な空に向かって吹かしたタバコの白い、白い一筋が、そのまま掻き消えることなく今もあの屋上に漂い続けていることを。 僕は知っている。 ある初夏の昼下がり、 それは僕に向かってまっすぐに落ちてくる。 目も眩むような暗闇の中で、僕は両手をいっぱいに拡げた。 |
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