WORKS
上演作品
▼未完成な犬の末裔
2010.5.3_7
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大人の時間と子供の図鑑
悠久の地・トットリにてオカマバーを経営する父・カマトトの教育理念によって、屋根裏部屋で暮らす少年カマタマ。父が差し入れる本やビデオなどの、膨大な「知識」を友として遊び、階下からうっすらと漏れ聞こえてくる夜毎のミダラな嬌声を子守唄代わりに眠る日々を送っていたのでした。 |
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少年カマタマ ・・・その目覚めは、いつもとは違っていた。
マキ 起きてください。
少年カマタマ 寝床が妙に蒸し暑く、体は火のように火照っていた。
マキ 起きてくださいってば。
少年カマタマ 耳障りにも耳元では、パチパチと、薪(マキ)の爆ぜるような音が聞こえていた。
マキ ウェイク・アップ、青少年。光陰矢の如し、秋の日も青春も暮れるのは一瞬よ。
少年カマタマ ・・・誰だい、お前。
マキ マキです。
少年カマタマ マキ?
マキ 寝過ごすのも程ほどにと、火床(ほど)からお出にならない寝坊助に、爽やかなモーニング・コールを差し上げました、耳元でパチパチと。
少年カマタマ (しげしげと眺めて)・・・見たことのない生態だ。
マキ カクタス亜科、ブラウニンギア連、アルマトケレウス属。
少年カマタマ 何だって?
マキ ま、早い話が、サボテンです。
少年カマタマ サボテン。
マキ マキって呼んで。ちくちく。
少年カマタマ 「サボってんじゃないの」と陰口を聞かれる女性になら、僕にも多少の心当たりがあるけど。
マキ 忘れさせてあげる、そんなつまんない女のコトなんか。
少年カマタマ え?
マキ お姉さんが新しい世界を見せてあげるわ、ぼうや。
少年カマタマ それって、宇宙のコト?
マキ もっといいコト。・・・いいのよ、触っても。掃き溜めの宝石とも噂される、魅惑のボディー。遥かトットリの砂丘を越えてゆくキャラバンの喉を潤す、一噛みのドラゴンフルーツ。瑞々しくも悩ましの果肉、サボテンの肌に。(と、手を差し出す)
少年カマタマ ・・・。(おそるおそる握ると、)
マキ ちくっ。
少年カマタマ あ、痛え!
マキ そう、「あいてえ!」。それこそ秘められたサボテンの想い。オープン・ユア・アイズ!さっさと開(あ)いて、その両目。
少年カマタマ 血迷うな、サボテンのマキちゃん!ぱっちりつぶらな僕のマナコならもうとっくに、ウェイク・アップしているだろ。
マキ いいえ、それは錯覚よ。
少年カマタマ 錯覚?
マキ 真実を申さば、あなたの眼球は二つとも、未だ、つぶらに瞑られているの。ついでに言えば、体だって、火照る寝床で水平を保ったまま。
少年カマタマ でも、君の姿が見えるよ、サボテン。
マキ これは、交感です。
少年カマタマ 交感?
マキ 感覚を交ぜる、と書きます。交ぜているんです、今、二人の「感じ」を。
少年カマタマ 僕、漢字、読めないんだ。
マキ 漢字ではないの。感じるのよ。それが交感、テレパシー。サボテンの必須科目。
少年カマタマ 交感、コウカン・・・あっ、交換日記!
マキ 交換日記?
少年カマタマ 今日の分をまだ書いてないんだ。
マキ 目を開かなければ、日記は書けませんよ。
少年カマタマ どうすればいいかな?
マキ まず、水平の体を、垂直に起しましょう。
少年カマタマ ・・・こうかい?
マキ そして寝床から抜け出す第一歩を、本能の思うままに踏んでごらん。
少年カマタマ ・・・こうかな?
マキ あっ!足だわ!足が出た!
少年カマタマ えっ?
マキ 記念すべき世界へのデビュー、その第一歩を、常識外れにも、なんと足で記した!
少年カマタマ 一歩を足で記すのは当然だろう。
マキ ところがそうではないの、神童。凡百の胎児はね。
少年カマタマ 胎児?
マキ そう、胎児はね、ペケペケと、バッテンが二つ並んだダブルエックスのお腹の中で十月十日、羊の毛の混じるプールでひととおり溺れ飽きた果てに、頃合を見計らってはまずヌケヌケと、頭から世界に顔を出すと相場が決まっている。
少年カマタマ 頭から?
マキ けれど、時としてトキドキ、ケタ外れにも、足から先に出てくる赤ん坊が存在する。大地をしっかと踏みしめて、しかる後におごそかに、塗れた面(オモテ)をお現しになる。それこそ、神童、神の器。生まれながらに世界をさかしまに見つめる、逆子のスケール。
少年カマタマ 逆子・・・けど、僕は、赤ん坊じゃない。
マキ そう、もう、あなたは子供じゃないわ。一足飛びに、少年ですらない。立派な大人よ、逆子の霊長類。
少年カマタマ いや、何もまだそこまでは・・・。
マキ いいえ、その両目を開けば、分かること。あなたはとっくに、少年では無くなっている。
少年カマタマ 蒸し暑くも寝苦しい、たった一夜の熱帯夜を過ごしたくらいで、胸躍る青春時代を飛び越してたまるか!
マキ サボテンの言葉に耳を貸せないのなら、論より証拠と、感じてごらん、足のウラ。
少年カマタマ 足のウラ?
マキ 九十九のツボの詰まったその土踏まずに、大地と擦れる摩擦を感じる?
少年カマタマ ・・・アレ?・・・感じない!摩擦を、感じない!
マキ もう、裸足じゃないから。
少年カマタマ え?
マキ あなたは既にその足に、底の厚い、立派な靴を履いてるわ。それが、証拠。子供じゃないのよ、何処にだって行ける。
少年カマタマ ゾクゾクと、ソラ恐ろしいココロモチだ。
マキ そのココロモチに打ち勝って、さあ、つぶらなマナコを開いてごらん。そこには大人のカマタマが、手ぐすね引いて待っている。
少年カマタマ ・・・!
マナコがゆっくりと開くように、仄かに光が差す。と同時に、少年カマタマは青年カマタマと入れ替わる。
青年カマタマ ・・・これが、俺?
マキ 目が開きましたね。おはよう、神様。
青年カマタマ カミサマ?
マキ あなたの屋根裏は、今、消滅しました。そしてこれで、全ての準備が整いましたわ。
青年カマタマ ・・・マキちゃん?
マキ ハイ。
青年カマタマ これが、俺が生まれて初めて見る、屋根裏の外の世界?
マキ ハイ。
青年カマタマ 真っ暗だね。
マキ こんなモンです。
青年カマタマ 今は、夜なの?
マキ 昼も夜も、ありません。
青年カマタマ え?
マキ そればかりでなく、月も、太陽も、星も、時間も、何もありません。あるものと言えば、唯一つ。
青年カマタマ 何です?
マキ エーテルだけです。
青年カマタマ えっ。
マキ ですから、頑張って、神様!さあ、張り切って、クニツクリを始めましょう!
青年カマタマ クニツクリ?
マキ さかしまの視線を持って生まれた逆子らしく、まずは文字をさかしまに読んでみて。
青年カマタマ 「クニツクリ」を、さかしまに?
マキ そう。
青年カマタマ 「リ・ク・ツ・ニ・ク」?
マキ そうです、リクツニク、すなわち、理屈と、肉。
青年カマタマ 理屈と、肉。
マキ サボテンの提供する、ためになるクニツクリのメッセージ。ますは理屈と肉を、見つけましょう。
青年カマタマ どうやって?
マキ メイ界のアフタヌーン・ティーに御呼ばれされて頂きます。
青年カマタマ メイ界?
メイ メイで〜す。
アン アンで〜す。
青年カマタマ あっ、メイドさん。
マキ メイ界のトランジットに住まう、水も滴る、水先案内人です。
メイ 如何でしょうか、如何でしょうか。え、おせんに、キャラメル、アイスクリン、世紀のゲテ物、いちご味のプッチンプリンに婚姻届。
青年カマタマ 婚姻届?(と、大きな声を出す)
マキ そんなに大きな声出してたら、早くも枯れるわよ、ガラスの喉。
アン カラカラと乾いた喉に一服の湿り気、ガラスの喉を潤す、ブラック・ティー、お紅茶は如何ですか。
マキ アラ、丁度水分が欲しかったところ、渡りに舟ね、水先案内人。
アン アール・グレイにレディ・グレイ、セイロン、アッサム、ダージリン、リゼにジョルジに、長野うまいんだに茶もありますが。
マキ 恐れ多くも女王陛下のブレンド、プリンス・オブ・ウェールズ・フレーバー、プリーズ。
アン 畏まりまして、畏まりました。
マキ 神様は?
青年カマタマ んじゃ、昆布茶。(と、近づくと、)
メイ ピピーッ!(と笛を吹く)
青年カマタマ えっ?
メイ ハイ、下がって、下がって!
アン こっから先に入っちゃ、ダメよ。(と、踏んだり、蹴ったりされる)
青年カマタマ メイドに踏んだり、蹴ったりされたあ!
マキ ジっと我慢の子でいなさい、トランジットでは。
青年カマタマ 渡りに舟じゃ無かったのか。
メイ その舟に乗るために、取るものも取り敢えず、まずはパスポートを拝見。
青年カマタマ パスポート?
アン そう、旅券。
青年カマタマ どんな了見です、メイドさん。
アン 例え一歩でも、メイドの土を踏んだり蹴ったりしたいのなら、何は無くとも、つまびらかにして頂きます、その身の丈とその身分。
マキ ハイ、パスポート。
青年カマタマ ・・・あっ!それ、俺の交換日記!
メイ 鍵が掛かってるじゃない。
アン 密室ね。
マキ その密室を180度、ひっくり返してご覧下さい。
メイ 180度?(と、ひっくり返す)
マキ その右下に。
アン アッ、お名前書く欄があります。
メイ 住所、氏名に生年月日。
アン メールアドレスに電話番号。
マキ 必須項目事項を網羅してあります、過不足無く。
メイ ・・・いいえ、残念ですけれど、勇み足。これでは不足です。
マキ 不足?
アン アシが足りません、すなわちメイドの土を踏む足が。
マキ どんな一本がミッシングだと言うんです?
メイ メール、オア、フィメール?ズバリ、性別の欄が、空白です。
マキ 性別?
アン 今更申すまでも御座いませんが、由緒正しきメイ界には、姪っ子しか入ることが許されておりません。
青年カマタマ 姪っ子。
メイ 「女に至る」という字を書きます。
アン メイ界への渡し舟は、女へと至る道のり。ペケペケとダブルエックスの鍵穴を持った乙女しか、この河をお通しする訳には参りません。
青年カマタマ ・・・なあ、サボテン。
マキ なんです、霊長類。
青年カマタマ 性別って、何だい?
マキ サボテンの辞書に照らし合わせて鑑みるにおしべとめしべのコトでしょう。
青年カマタマ 偏った知識を総動員させれば父ちゃんと母ちゃん程度の意味だな。
メイ ハイ、やって参りました。ここが明・暗の分かれ道。
アン ダブルエックス、はたまた、エックスワイ、果たしてどちらに偏りますか?
青年カマタマ マキちゃん。
マキ ハイ。
青年カマタマ 君は、どっちなんだ?
マキ 両方です。
青年カマタマ え?
マキ サボテンの生態は禁じられたふたなり。父ちゃんでもあり母ちゃんでもあり
青年カマタマ ハイブリッドなんだ。
マキ おしべもめしべも完備した、双子葉植物です。
青年カマタマ じゃあ俺も、そうしよう。
マキ・メイ・アン えっ?
青年カマタマ 住所・氏名・生年月日にメールアドレス・電話番号の他には、のらりくらりと空欄のままにしておこう、ハイブリッドに。
メイ 明暗の結末をはっきりさせぬまま、この道をまかり通るおつもり?
青年カマタマ 「明暗」は、そもそもからして、未完の純文学だ。
アン そんな根無し草の文学の香りに、いつだって女は、たぶらかされてきた。
ヘテロ あ、あ、姐さん。
ウマヅメ どうだい?
ヘテロ ビ、ビクとも開きません。ど、ど、どーゆうわけだか、男湯の扉が!
ウマヅメ 早くどうにかあの遺児を引っ張り出さないと、代々受け継いだ伝統と格式のウマ屋の泉質が変わっちまう!
ヘテロ ど、どんなカラクリです?
ウマヅメ いいかい、ヘテロ、よくお聞き。あまねく風呂屋に伝わる忌まわしの黒歴史。間引きの物語を。
ヘテロ マ、間引き?
ウマヅメ じゅくじゅくと熟れ過ぎた夏のトマトのような日が落ちて、オウマが刻の夕暮れ時、風呂屋に一組の親子連れがやって来る。シャンプーの後、仲むつまじい背中の流っしこが終れば、いよいよ湯船に入場し、首までどっぷり浸かるだろう。その刹那、親が子に言う。「目を瞑って、百まで数を数えなさい」。
ヘテロ ウ、うん、言う、言う。
ウマヅメ 疑うことも知らず、子供は目を瞑るだろう。そして指折り、数え始める。のぼせる頭でぼんやりと、つっかえ、つっかえ、それでもとうとう百まで数え上げ、やっとその目を開けたその時、けれどそこにあるはずの、親の姿は雲と消えてしまっていて、湯船には自分ひとり。他には、誰の姿もない。
ヘテロ そ、そ、そんな!
ウマヅメ 子供は、数を数え間違えたのかと考えて、再び目を瞑り、アタマから数え始める。ひとつ、ふたつ・・・も一度百まで数え上げて目を開ける。誰もいない。そこで三度、また四度・・・けれど何度数えなおしても、二度と再び親の姿が現れることはない。名にしおう煮えすぎた硫黄の賭け流し、捨てられたことにも気付かず、親の許しが得られなければ湯船からは出られないと思い込んだ、その子の運命はどうなる?
ヘテロ ゆ、ゆ、ゆ、茹でダコ。
ウマヅメ そう、いつしか湯船の中で真っ赤に動かぬ肉人形、じくじくと流れ出る体液の腐臭と硫黄の香りとが混ざり合うとき、硫黄泉の泉質が化学変化を起こす。これこそ、呪われた子捨ての湯、親に間引かれた親知らず、遺児の涙。
ヘテロ ど、ど、どう変わるんで?
ウマヅメ メイ界のお墨付き、信頼と実績の硫黄泉から、遺児を間引いてみな。
ヘテロ イオウセンから、イの字を、ま、間引くんですか。
ウマヅメ すると何が残る?
ヘテロ お、お、黄泉(おうせん)?
ウマヅメ こいつは、黄泉(ヨミ)、と読みな。
ヘテロ ヨミ!?
ウマヅメ これで分かったかい。何があっても遺児だけは、湯に浸からせちゃ、ならなかったんだ!テメェの家の湯船から、ヨミ行きの客を出したとあっちゃあ、営業停止の憂き目は避けれらない!
ヘテロ た、た、た、大変だあ!お、お、お、お客さあん!
ヘテロ、男湯の扉を、ドンドンと叩き始める。場面は、再び男湯の中。
青年カマタマ にわかに脱衣所の辺りが、騒々しいですね。
メシイヤ 不届きにも番台をスリ抜けた闖入者を叩き出そうと、従業員が戸を叩いているのであろう。
青年カマタマ 叩かれているのは、俺の背か。
メシイヤ 懐かしい音である。
青年カマタマ 懐かしい?
メシイヤ かつて遠い昔に、朕も、よく叩いたものだ、この扉を内側からドンドンと。サボテンに手を握られた時のようなイキオイでもって。
青年カマタマ サボテン。
メシイヤ ちくっ。
青年カマタマ あ、痛え!
メシイヤ そう、「開いてえ!」「開いてえ!」と、命からがら、叫び続けて。
青年カマタマ えっ、それじゃあ、断食の期限、グランドフィナーレが過ぎても、岩窟から出てこなかったのは。
メシイヤ ・・・事故だったのだ。扉は傾いで、開かなかった。
青年カマタマ 象徴の影に思いがけない新事実だ。ベストセラーが狙える。
メシイヤ 一月もの飲まず、食わずで骨ばかりとなったこの腕力では、いくら取っ手に手をかけてみても、
青年カマタマ 骨折り損は火を見るより明らか。
メシイヤ ・・・見えないのだ。
青年カマタマ え?
メシイヤ 見えないのだ、何も。火を見るどころか、雌雄同体、眼前のハズの貴様の顔も。何もかも。
青年カマタマ 目が、お悪いのですか?メシイヤ。
メシイヤ 瞑(めし)いているのだ。
青年カマタマ 盲目だったのか。
メシイヤ 昔話の続きにその謎を解く鍵がある。
青年カマタマ 聞かせて頂きましょう。謎を紐解く鍵のありかを嗅ぎ付けるべく。
メシイヤ 骨折り損とは分かっていても、それでもさらになけなしの力を込めて、朕は扉を叩き続けた。「開いてえ!」「開いてえ!」・・・するとほんの僅か、細―く一筋の光が見えた。なけなしのその隙間に、必死で目を押し当てて、外の様子を伺おうとした、その時。
青年カマタマ その時?
メシイヤ ・・・見てはならないモノを見た。
青年カマタマ え?
メシイヤ それ以来、朕のマナコは、固く、メシイたままである。これが、私の受けるべき咎なのだ。
青年カマタマ トガ。
再び、男湯の前の風景。ウマヅメ、ヘテロに加えて、扉を開けようと奮闘するメイとアンもいる。
ウマヅメ どうでしょう?
メイ どう、と言われてもねえ。
ウマヅメ 難しいですか。
メイ 難しいかもねえ。
アン 古い扉だしねえ。
メイ 傾いじゃってるしねえ。
アン オンボロねえ。
メイ ビンテージよねえ。
アン 鍵も壊れてるし。
メイ パッキンも腐食しちゃって。
アン ドアノブに錆が。
メイ 桟にホコリが。
アン レールに湯垢が。
メイ 溝に糸クズが。
アン 肩にほつれが。
ウマヅメ だから、どうなんですか!
メイ 開かなくなってから、相当経ってるみたいですしねえ。
アン 木っ端ミジンコ、この期に及んでは破壊するより、最早手はないかと。
ウマヅメ そんな!代々受け継いだ湯屋の肌に傷を付けるだなんて!
ヘテロ コ!
メイ ・・・コ?
ヘテロ コ!
アン ・・・コ?
ヘテロ コ、コ、コ、こここここ、
ウマヅメ 緊急事態だ!淀みなく喋りな!
ヘテロ (淀みなく)事ここに至らば残された手はたった一つしかありませんね。
メイ 最終手段ね。
ヘテロ ええ、もうこうなったら、
アン こうなったら?
ヘテロ ストリップしかない!
ウマヅメ・メイ・アン ・・・はあ?
ヘテロ ストリップ、すなわち裸踊りです。
ウマヅメ 裸踊り?
ヘテロ 火の元に雨。熱に火照った引き篭もりのアタマを冷やして部屋から引きずり出すためには、アメノウズメの裸踊り。神国日ノ本に古来より伝わる、由緒正しい方法です。
アン バカが博識になった。
ウマヅメ アメのウズメって?
ヘテロ オ、オ、オ、オ、
メイ マヌケに戻った。
ヘテロ お、お、お、踊るアホウに見るアホウ。ストリップのコツは我を忘れて、マ、マ、マ、マヌケに徹しきることです、ウマヅメ姐さん。
アン ウマヅメを、マヌケに。
メイ 「マ」を抜くのね。
アン ウマヅメから「マ」の字を抜けば?
メイ ・・・ウ・ヅ・メ?
ウマヅメ え?
メイ・アン アメノウズメ!
青年カマタマ 俺を神様、と呼んだな。
??? ええ、呼びやした。現人神(アラヒトカミ)と。
青年カマタマ アラヒトカミ?
??? あら、一噛みでペロリと頂けちゃう、お手ごろサイズなんじゃない?と品定めをしやした。
青年カマタマ (震えて)おれをがぶりと、一噛みにするつもりか、バケモノ!
??? 残念ながらクイズに不正解であった時には。
青年カマタマ クイズ?
??? 乗るか、反るか?スフィンクスの「お腹いっぱいストマック、びっくりこむら返りクイズ」!
青年カマタマ どうせ出来レースなんだろう、イカサマ師。八百長と分かっていて、乗車できるか、そんな口車に。
??? ところがどっこい、由緒正しい神話のお約束。スフィンクスと対決するのは、オイディプス王をおいて他になし、と教育勅語にもハッキリと義務づけられておりやす。
青年カマタマ オイディプス?
??? その名も高き、天下のマザコン。
青年カマタマ オイディプスなんて知らない!おれは、「おいで、ブス」の王だ。
??? ハイ。ハッキリとお名前を名乗られましたところで、本日の挑戦者はトットリ県よりお越しのアラヒトガミ、おいでブス王さんです。
青年カマタマ あっ、勝手に進行したな!
??? それでは張り切って第一問。・・・私は、誰でしょう?
青年カマタマ ・・・ハ?
??? 私は、誰でしょう?
青年カマタマ 偏った知識のアンチョコを紐解けば、お前のクイズの回答は、有史以来変わらず「人間」だと、参考書にも書いてあるぞ、スフィンクス。その傾向と対策に従って、ズバリ、答えは「人間」だな。
??? ・・・ブブーっ!
青年カマタマ え?
??? うーん、惜しい!もう一歩、踏み込んで欲しかった!残念。不正解でやす。
青年カマタマ えええ?
??? 残念ながらも不正解となってしまわれました、おいでブス王ことアラヒトカミ様には、ガブリとあら、一噛みに頂かれてしまう運命を辿って頂くことと、相成りました。
青年カマタマ ふざけるな!八百長だ!だったら、答えを!答えを言ってみろ!どうだ、言えないんだろ!こいつは初めから仕組まれた、答えの無い問いだ!
??? ・・・分からないのか。
青年カマタマ え?
??? 分からないのか、父親殺し。
青年カマタマ 父親殺し?
??? 呪われた父親殺し。半獣、盲目、醜い怪物、スフィンクスの姿は、遠い未来の暗示、呪われし己が自身の合わせ鏡。俺はお前で、お前が俺だ!
青年カマタマ !
青年カマタマ、スフィンクスに一噛みにされる。暗転。