WORKS
上演作品
「薔薇とダイヤモンド」
物語の底を抜く
「ところで」
男は話題を変えた。
「電話がかかってきますよ。私のか、あるいはあなたのケイタイに今」
「私は探偵です。唯の探偵じゃない。物語の探偵です。もしこの会話が物語の冒頭なら必ず電話が鳴るはずなのです」
「昔、一冊の本が教えてくれました。あらゆる謎解きの始まりはフイに鳴る一本の電話の音からだと。私はずっとそれを待っているのです。
探偵の仕事は待つことです。私は私の謎の手がかりをずっと待っている」
「物語の中で人が一人死ぬ。すると現実でも一人、人が死ぬのです。このことはまだ誰も知らない。
物語の中で殺された人間の数と現実に殺された人間の数がピタリ一致する。
これが、私が絶対に解きたい謎なのです。さて時間だ。電話がかかってきますよ」
そして電話が鳴った。私の、胸元で。
