WORKS
上演作品
諧謔能楽集Ⅰ
「カノン、頼むから静かにしてくれ」
夜啼鳥篇/土喰蛇篇
左手に聞いてみろ
三尊をお待ち申し上げます中秋に、数日も降り続いた野暮な雨雲が退いて、見通しの効く満月の夜だった。
最初に音が来て、すぐ後に目の前が真っ暗になった。
その暗闇の中で は、紅い火花が幾つも散って、パチパチと爆ぜ、燃え広がった。
私の視界はその炎の明かりと熱とで、真っ暗に明るかった。恐ろしくは無かった。
私は何となく、戦争が始まったのではないか、と思っていた。
私がそれまでに経験したことのないほど遠くからやって来た音。
だからきっと外国から来たのだろうと思ったのだ。
外国からミサイルが飛んできて、今、私は炎に包まれている。やがて私もこの火に焼かれて、たちまち灰になってしまうのだろう。
それもいいかもしれない。
私に未だ残されている、あと何十年という、無限にも等しい、気の遠くなるような時間の中で、私の中の肉という肉が全て腐敗し、
嫌な匂いを出すようになっても生き続けなければいけないのだったら、いっそ今、全てを焼かれてしまっても構わない。
そう思った。
恐ろしくは無かった。
少なくともそのときまでは。
