彗星たちのスケルツォ

WORKS

上演作品
▼第三回神奈川かもめ短編演劇祭参加作品

彗星たちのスケルツォ

上演記録告知ページ /▼稽古メモ

illustration:町田メロメ

神奈川かもめ短編演劇祭 参加作品

「彗星たちのスケルツォ」


作・演出 小野寺邦彦

出演 江花実里/小野寺邦彦

1月25(木)~28(日)
KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ

ものがたり


雨の中、傘をさした女が待ち合わせ場所に立っている。
そこは新宿紀伊国屋書店前であり、渋谷のハチ公前であり、六本木アマンド前であり、かつて新婚旅行で訪れたガラパゴス島の空港でもあり、
そしてただの雑踏である。
濡れそぼったトレンチコートの裾を引きずって現れた一匹のケダモノが女の胸をまさぐる。
その懐からは、書店で万引きした文庫本が……。
『10月は黄昏の国』
誰そ彼?と、対子落としに問い詰めるナガツキ9月をやり過ごす、諧謔の物語。

ご挨拶


新宿にある紀伊國屋書店に初めて一人でいったのは、1997年、15歳でした。近所の本屋には、ベストセラーと漫画しか置いておらず、どうしても読みたかったJマキナニーのBrightness Fallsを電話で取り置いてもらい、受け取りに行ったのでした。インターネット、まだ全然でした。ダイヤルアップでした。そんな時代。

何もわからず新宿駅の南口へ出てしまい、そこから東口へ出るまでに1時間かかりました。ものすごく怪しい謎の義援金を募っている人に道を教えてもらいました。そうしてやっと辿り着いた紀伊國屋書店。1階入り口のエスカレーター前には、多くの人待ち顔のヒトビトがいました。『待ち合わせ』です。携帯電話、もうみんな持ってたのかな?PHSかな?でもまだまだ、紀伊國屋書店前は『待ち合わせ』のランドマークとして機能していました。僕が携帯電話を初めて持ったのは大学に入った2003年の9月。6年先のことでしたね。

15歳の僕が足を踏み入れた紀伊國屋書店は、迷宮でした。1階入り口にトラップのように仕掛けてあるエスカレーター。登ってしまうと、1階へ下るエスカレーターはありません。上りのエスカレーターは4階まで。5階より上は階段かエレベーター。このエレベーターがぜんぜん、来ない。やっと来て扉が開くと、何と今時エレベーターガール。5階にのみ置かれたショッピングカートは他階への持ち出し厳禁、1階テナントには謎の化石ショップ『東京サイエンス』。そして、あれだけ賑やかな店内にあって、時間が止まったのか?と思うほど誰も足を踏み入れない一角、海外SF文庫コーナー……。予定通り本を受け取って、フと足を踏みれたその書棚から、僕は一冊の本を抜き取りました。ブラッドベリの『十月はたそがれの国』。生まれて初めての、あまりにベタなジャケ買い、いえ、タイトル買い、でした。

インターネットが迷宮で、リンクを踏んでゆくうちに、思いもよらないサイトに辿り着いてしまう、そんな時代もありました。グーグルはまだなく、YOUTUBEはカタチもなく、SNSなど思いもよらない。検索機能はお粗末で、狙った情報を得るにはコツや技術が必要でした。ただ未整理の情報だけがぐるぐると取り巻いている、それはあの大型書店を彷徨って、見も知らぬ本の背表紙の群れを眺めたときと同じでした。無限にも思えるその背表紙たちの1冊、1冊すべてに物語が書き込まれているだなんて、クラクラしました。クラクラして、そして幸福でした。

きっと今の時代にも、迷宮はあるのでしょう。未整理で、無秩序な情報と待ち合わせる場所。それは必ず、あるのです。

という感傷的な思い出とは一切、何の関係もなく芝居が始まります。10年以上芝居を続けてきて初めて、自主ではない公演です。神奈川かもめ短編演劇祭ってやつです。上演時間は20分。一瞬ですね。いま、愚かにも2倍の分量書いてしまった台本を、ひいひい言いながら作り直しています。おまけに今回はなんと15年ぶりに出演までしてしまうのですから、どうかしています。本当、気が違ったとしか、思えません。

『彗星たちのスケルツォ』、江花実里との二人芝居です。短編、俳優として出演、演劇祭、他人さまの軒先での公演と、初めてづくしで2018年が始まります。あ、あと劇場のKAATも初めてです。大舞台です。是非、よろしく。元町でお待ちしております。

小野寺邦彦


タイムテーブル

A、Bチームそれぞれ、4団体20分ずつの上演です。架空畳は【Bチーム】での上演となります。

受付開始は開演の40分前、開場は30分前となります。

公演に関するお問い合わせは、神奈川かもめ短編演劇祭実行委員会までお願い致します。

TEL:070-5089-9397  メール:contact@kanagawakamome.com

チケット

  • (前売・当日共通/全指定席)

  • 一般:3,000円

  • U24(24歳以下):2,000円
  •   
  • 公開審査会・表彰式 [一般・U24共通]:500円


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