インテグラルの踵は錆びない

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▼インテグラルの踵は錆びない
‐13人姉妹のモスクワ‐

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MEMO♯093【インテグラルの踵は錆びない20】
2020年10月02日

●29日、稽古でした。 前回が通し稽古だったんで、その返しをモリモリやりました。 大きな骨格は出来上がったので、あとは時間の限り、細部のディティールを詰めていきます。

●しっかし、今回の稽古は、楽です。 誤解を生む表現だとは十分承知していますが。 芝居を始めた頃、とにかく毎公演、やたらと苦労してたんですよね。 書くことも、演じることも、何もかも。 だから、苦労することがいいことなんだ、と錯覚したのでした。 まあ、そう錯覚しないと生きていけないくらい、ハードだったんです。 でも、それは結局、未熟だったからなのです。 芝居の質を上げるためには、楽が必要です。 可能な限り、楽をすること。 苦労してる、なんてことは作品には何の関係もないのです。 台本を書ききることや、台詞を覚えることに苦労して、それが終わればもう、出来た出来たと言ってしまってはどうしようもない。 台本を書いた後、 台詞を覚えた後 から、むしろすべては始まるのです。 だから、その時間に多くをさける今は、とーっても楽なんですよね。 楽しく遊んで、作りたい世界を、作りたいように作れている今、幸福です。

●俳優も、台詞が概ね、身体に馴染んできたようです。 台詞は、結果としておぼえてしまうもので、どう覚えるのか?って私自身は考えたことがないので、よく分かりません。 ただ、覚えやすい台詞と、そうでない台詞というのはあり 私の書く台詞は、比較的、覚え辛い部類かと思います。 ただまあ、今回は少し思う所ありまして、意図的に文体を変えてます。 書くことは変わりません。 実は、私は、思われている程は、自分の文体に執着はないのでした。 その文体を維持することが目的ではなく 未熟である自分に僅かばかりある、と思える特性を誇張する結果として、その文体が必要であったに過ぎない。 俳優においても、台詞が物語を伝える目的ではなく 自分の表現を引き出す手段に過ぎない、その集まりが、結果として物語として立ち上げってくれればな、という思いでやってます。 俳優は今回、稽古の間もマスクは着用しっぱなしですし 本番もマウスガード着用です。 音の「聞こえ」には相当苦労するはずですが、それも「今」を生きる俳優の冥利と高笑いしたいモンです。 冷や飯食いと、高楊枝に関しては、演劇人、エキスパートですから。 圧倒的な冷や飯喰いをお見せできるでしょう。 ハハハ。

●10月、いよいよ公演月です。 チケットの方、ゼヒ宜しく。 写真は歴代フライヤーで顔面アイコン化に成功した夜です。 では、また。
(主筆)


MEMO♯094【インテグラルの踵は錆びない21】
2020年10月03日

●30日、稽古でした。 劇場のある桜木町の青少年センターで。 宣伝や舞台の写真を撮ってもらってる、写真家のしんまつ君も来てくれまして。 前半は、俳優の衣装付き写真を撮りました。 小川さんの作って下さった衣装を着て、俳優を撮影して貰って、わいわいやりました。 一本の芝居を作る際に必要なのは、台本と俳優。 でもその周辺にも、照明や、音楽や、舞台美術や、衣装や、写真や、フライヤーもろもろ、 いろんな要素がゴージャスに合体して出来てるんですよね。 その一つ一つを、芝居に奉仕する付属物でなく、それぞれ独立した作品として残したい、という思いがあります。 それで、こういう写真を撮ったりしてるんですね。 愛をこめて、ワリにあわない熱量で作品を作ってます。 最近、公演を「作品」ということに躊躇がなくなりました。 それは、書いたように、衣装の小川さんや写真家のしんまつ君や、ビジュアルを作ってくれるオレンジ君なんかの仕事が ホントにプロ、だからです。 これだけのプロの力を借りて、作品でない、ワケはないのでした。 他力本願には自信があります。 ワハハ。

●稽古は、通し後の返しを丁寧に。 2幕目をアタマから1シーンずつ返して、問題点を一つ一つ、俳優と洗い出して解決していきました。 運動会の前の日に、裸足で走るために校庭の小石をいっこずつ、取り除いていた作業を思い出しました。 私は、運動会は概ね、ボイコットしてましたけど、その作業は好きでした。 いっぱい小石を拾って、得意げでしたね。 でも、こういう問題洗い出しの作業では、意見をバンバン言う人と、控えめな人がおりますので。 なるべく、控えめな声も導き出したいと思います。 ほんの一歩、台詞のたった一声で、芝居の印象は大きく変わりますからね。 変わることが、重要です。 芝居は稽古して、繰り返される反復の中にありますが それは同じことをやり続けるためではなく、その都度、違う風景に出逢うためです。 今は、その道をガリガリと整地する作業ですね。

●しかし、衣装着ると、俳優はやっぱイイですね。 ジャージでは肝臓の悪い人にしか見えないのに、岩松の存在感はさすがです。 木村くんもいいなー。 顔が舞台になってます。 コンビニでバイトできるのか、この顔で。 この芝居が終わる頃には、皆、舞台の上以外の場所では違和感を覚えるツラになっていることでしょう。 ケッコーな事ですな。 写真は写真を撮る人の写真です。 では、また。
(主筆)


MEMO♯095【インテグラルの踵は錆びない22】
2020年10月04日

●10月1日、稽古でした。 ついに10月です。 公演月です。 風も冷たくなって、すっかり季節は秋。 過ごしやすくなって参りました。 夏に作った、公演用の長袖Tシャツもいい具合にフィットしております。

●この日は、スタッフ総見と申しましょうか。 稽古場に音響、照明、舞台監督のスタッフがズラリと揃って通し稽古を見て頂きました。 初日から2週間以上前のこの時期に、通し稽古ができる豊かさを噛み締めつつ。 なるべくなら、本番に可能な限り近い環境を揃えようと思い 前日の深夜から、思い立って、劇伴の音楽を一そろい、用意しました。 今回は、ビート中心のハウス・ミュージックばかりを選曲しました。 神田のジャニスが無くなって以来、さて音をどうやって入手しようかと思っていたのですが。 勿論、スポッティファイやアップルミュージックなどのサブスクリプションから選ぶ選択はある。 でも、あまりに膨大なアーカイブから、ヒョイヒョイと選ぶというのは、なんかウマミが感じられないような。 気分でしかないんですけどね。 でも、気分で選んでますんで。 そんなわけで今回は、すべて自分の手持ちレコードから、新たにサンプリングして使うことにしました。 結果、偏った選曲となるわけですが、その偏りこそが今、重要だと感じます。 勿論、歴史も文脈も平らに均されたサブスクの膨大なアーカイブというものは重要です。 けれどもっと重要なことは、その中なら何を自分は「DISC」するのか。 ま、かっこいいこと言うとそういう事ですが。 実際は、好きな音楽を、どうシーンにあてがっていくか、カセットテープに自分オムニバスのアルバムを録音自作していく中学生の気分で作業しました。

●で、その曲を通し稽古中にかけてみたのですが。 俳優の中で、明らかに演技が良くなってしまった人が数名。 特に、杉山さんは良かった。 大きな感情のヤマを表現することに長けた俳優ですが、その感情に「フタ」をする技術を自覚すれば、もっといい部分が現れると思っていたのです。 この日の通し稽古では、その「フタ」が完全に機能していました。 あふれ出る感情を、どれと同等の力で抑え込む。 内部と外部がドカンと拮抗して、素晴らしかった。 直前の稽古までは、けっこう苦労していたように思えたんですけど。 なんとなく、流していた音楽のビートに波長を合わせてノリを作っていたように思いました。 リズム勘のある俳優なのかなー。 そういうことも知れたりするので、なるべく本番に近い環境で稽古することは大事ですわね。 舞台監督のにしわきさんも、終わったあとに杉山さんは良かったね、って言ってました。 なんでしょう、スタッフさんに俳優褒められると、すごいいい気持ちになっちゃうんですけど。 まるで自分の手柄のように思うの、マジ良くないと戒めます。 各個人の技量と表現は、すべて俳優その人固有の能力であり、それを演出家が引き出した、などと宣うのは本当に愚かしいことです。 能力使って頂いてるのです。 演出家は頭を垂れこそすれ、そっくり返っちゃダメ。 そゆことです。

●この日は、他に架空畳メンバーの澤岡さんも来てくれまして。 会うのは、3月の神奈川以来でしたが、相変わらずスルーっと稽古場に来て、スルスル―っと帰っていきました。 台本刷ってくれたり、今回は裏方仕事をチョイチョイとやってくれてます。 その時、その人の状況で、可能な範囲で公演に加わってくれるっていうのが好きです。 眼を炎にしてね、全員で一丸となってやるんだ、運命共同体なんだ!みたいなの、イヤなので。 両手を広げた範囲内で、やりましょうね。 手の長さも、その都度変わるってもんです。 ね。

●本番まで連日稽古が詰まっておりまして。 この稽古メモも、ちょっと飛び飛びになりそうな予感です。 めちゃ短くなる日もあるでしょう。 メモですから。 なるべく、どうでもいいことから順番に書いていきますね。 では、また。
(主筆)


MEMO♯096【インテグラルの踵は錆びない23】
2020年10月05日

●2日、稽古でした。 昨日の2度目の通し稽古の返しをしました。 通して→返す→また通す→のウロボロス状態であります。 俳優と一緒にぐるぐるしながらバターになっております。

●通し稽古の時の杉山さんがとっても良かったので、その演技を定着させようと、少しだけ演出を固定しました。 抑圧から自由になった俳優に、また新たな抑圧を与える。 こっちが、ぎゅうぎゅうに抑え込めば抑え込むほど、その倍の反発力で俳優は返してくれますので。 安心して抑圧野郎に徹することが出来ます。 肩コリますけどね。 稽古始まって以来、コリコリです。 終わった頃には、セメントになってるんじゃないでしょうか。 バターで、セメント。 私は一体、何者なんでしょうか。

●近頃は、稽古前の時間とか、休憩中とかに 俳優がちょこちょこ、私のとこに来まして、自分の役について相談されたりします。 このヒトって、どういう感じの性格なんでしょうね?とか ここって、どういう感情なんですかね? とかね。 うーん、どうなんでしょうねって私も一緒に考えます。 役も台詞も、私が書いたものではありますが。 書いてしまえば他人です。 子供を産んだお母さんが、その子供自身ではないのとまったく一緒です。 なので、産んで育って一人暮らしを始めた子供に、仕送りと一緒に手紙書くような気持ちで俳優と考えます。 長井くんなんかは、けっこう悩んでいます。 本来の自分では理解できない整理を「役」としてどう落とし込むか。 結構、難しいですよね。 それこそブレヒトだったら、自分の台詞を俳優自身に批判させそうなものですが。 その批判マインドをも織り込んだ、一言のセリフにして欲しいというのが、無茶な私の願望です。 平川さんは、髪型変えたりして、外枠と内枠から入り込んでおります。 比較的フォーマルな演技体ですが、まだまだ好き勝手やれるんじゃないかなーとも思ってます。 フォームを崩すってことでなく。 フォーマルを拡張して、暴れまわるフォームを構築できる。 意外と、化け物のような俳優になるんじゃないかという予感があります。 荒れ狂う精神を、荒れ狂った形で飼いならすような。 ま、これは私の妄言です。 本田さんは、台詞と感情の精緻なすり合わせから、精密に演技を作ってます。 この作業は、毎度見事です。 簡単に「うまい」演技、と言ってしまいがちですが、「うまい」人はちゃんとその設計図にコストをかけています。 コスパ、は相当悪いです。 でもパフォーマンスは最高です。 アタマが下がります。 ほんと。 明里さんは、アンサンブル全体の細かいチューニングに気を配ってくれてます。 私がズボラですからね。 指一本の動かし方や、目線、感情の生理までサジェストしてくれます。 彼女がいてくれるからこそ、私は、安心してズボラしてられるのでしょう。 コンマスですね。 コンサートマスター。 ズボラな指揮者の横で、ち密にアンサンブルをコントロールする、第一バイオリン。 ま、テキトーなとこはめっちゃテキトーなんですけど。 そのテキトーさにすら、救われております。 さんきゅー。

●そんなわけで、公演まで2週間切りまして。 SNSでは、しんまつ君が撮影してくれた俳優写真も公開されております。 皆、楽しんで撮りましたので、ゼヒ見て下さいね。 制作の永井が、衣装のコンセプトと共にあげてくれてますので。 このコンセプトって、私が霊感によって小川さんにお願いした妄言が メッセンジャーに残っていたので、そもままスクショして永井に送ったものが元なんですけど。 改めて読むと、私のオカルトメッセ―ジを、よくもまあ、小川さんはここまで 的確に具現化してくれるものだと驚きますね。 安心して脳波を放出したいと思います。 写真は、樋口さんのアナザーショットです。 では、また。
(主筆)


MEMO♯097【インテグラルの踵は錆びない24】
2020年10月07日

●1日稽古休み挟みまして、4日、稽古でした。 これで本番まで、お休みはもう1日しかありません。 それも小屋入り2日前、最終稽古の前日です。 8日間連続稽古。 なかなかしんどいですけど。 まあ、一番、しんどいのは俳優ですからね。 残りの稽古回数も、この日を入れて9日。 いよいよホントのラストスパートです。 ファーストスパートやミドルスパートが、いつあったのかは、分かりません。

●とはいえ、やることは変わらず、地味~にチクチクと返し稽古です。 俳優から出てくるさまざまな窮屈を、一個ずつ解決していく作業。 はじめに演出をつけたときは、台本も初見ですし、取り合えずは決めごとを作って、がんじ絡めにします。 そのがんじ絡めの中を自由に動けるようになると、だんだん、約束事がいらなくなってきます。 枷を外し、そして別の魅力的な枷をはめていく。 ま、この時期に、この地味な作業が出来ていることが喜びです。 ここしばらく、出来上がって芝居を良くする作業しかしてません。 とっても豊かな時間です。 ホントに。

●いつもの事ながら、ボチボチ、実里さんが煮詰まって参りました。 ここのところの公演では、世界の謎に対峙するような役をふっていたのですが 今回は久々に、世界の謎、そのものになってもらいました。 それはつまり、劇中で動機が伏せられていて、それを他人に発見される、という事です。 これは簡単に演じようと思えば、いくらでも簡単に演じられます。 動機を持たない書き割りの人形であっても、それなりに成立はするからです。 正解のない問いであるだけに、その心理に分け入ると、泥沼です。 で、実里さんが、思いきり泥沼にハマるタイプだと分かっていて、この役を振ったのです。 私が、その姿を見たいからです。 その拘泥は、とっても魅力的なものです。 でもまあ、俳優は大変ですので、ある種、見世物的な興味だと思います。 芝居は、興行ですから。 出来ることを、出来るように見せても、お代はとれません。 悩むならば、悩むその姿をも見世物に仕立てあげる。 江花実里は、お代の取れる俳優です。 架空畳の俳優だからです。 余裕はありません。 器用でもありません。 けれど、そこにしかない、その瞬間にしかあり得ない演技をします。 複雑な味わいの料理を口に入れ、ゆっくりと歯ですり潰し、舌を這わせる。 その邂逅の愉悦を表現しようと、格闘してます。 私は、稽古場でボンヤリそれを見ているだけです。

●そんなわけで、初日まで10日を切っております。 今回、お席は通常の半分しかございません。 残席あるようでも、絶対数が少ないですから、ご注意を。 どうぞ宜しくお願いしますね。 写真は、念力で分身を出す大浦さんです。 では、また。
(主筆)


MEMO♯098【インテグラルの踵は錆びない25】
2020年10月09日

●えーと、ついに滞ってしまいました、このメモ。 うーむ、ここまで稽古の全部の回、ちゃんとメモを残してたんですけどね。 もう、無理ですね。 ま、でもいいんです。 もともと、頼まれてもいないのに書いてるメモなんだから。 むしろ、ちょっと真面目に書きすぎていたのです。 テキトーじゃないとね、止めちゃうしね。 ほんと。

●前回の稽古から、5日~昨日8日まで、4回の稽古をしました。 そのうち1回は、恒例のハイスピード通し稽古。 クオリティを一切無視して、兎に角、自分に出来る最速のスピードで台詞と演技をする。 俳優の邪心が失せて、物語そのものの骨格が浮き彫りになります。 この稽古までたどり着ければ、もうゴールは目前です。 これまでは、だいたい、最後の通し稽古の一回か、二回前の稽古くらいでやってたことなんですけど。 今回は、初日の9日前にこれがやれました。 この稽古の大事なところは、自分の台詞を入れるために、他人のセリフに集中することです。 自分がセリフを言っている時間は、自分が好きに使っていい時間ではありません。 次にセリフを言う俳優に、時間を渡すためにある時間です。 その中に、感情と物語を練り込む。 決して、感情を表現する専用の時間ではないのです。 時間は誰にも等しく残酷に流れます。 自分が喋るときだけ、その時間を幾らでもタップリ消費してしまう演技が「くさい」演技の正体です。 感情は、時間差で伝わるのがいい。 さっと駆け抜けていったその残像が陽炎となって、客席に浸透する。 芝居は、説教ではないのです。 そんなわけで、俳優はびゅびゅーっと頑張りました。

●役についても、物語についても、俳優はどんどん深度を深めていきます。 今、見てて面白いのは、伊澤さんと平川さん。 作ることと、壊すこと、のうち、壊すことの方向性に目覚めつつあります。 「なりきる」こととそれを俯瞰から冷静に「批評する」ことは、対になる作業です。 バカをやれない者は、賢くもなれません。 それは、自分が自分をどう表すか、と、他人がそれをどう見るのか?そのズレを見つめる作業だからです。 世界に回答はなく、ただ問いだけがいつもあるように、自分と他人に同時に問いを発する俳優は魅力的です。 自分は他人であり、同時に他人こそ自分なのだと知ったとき、俳優は無敵です。 そんなわけで、平川さんも伊澤さんも、無敵になる日は近いでしょう。 勿論、他の俳優も様々なアプローチで自分の役に接近し、遠ざかる煩悶を続けています。 皆、とても真摯で、まじめです。 ありがたいことMAXであります。

●こばやしさんのギアの入れ方もスゴいです。 正直、どこでどうやってギアを入れてるのかよく分かんないんですけど。 風呂に沈んでる間に、フタ閉められちゃった人が、頭をゴンゴン打ち付けてるような演技です。 まったく喩えが機能してませんが。 要するに、内省なのです。 でもそれが、内臓をひしゃげて、皮膚のカタチを変えるのが分かる。 内面を、あくまで内面のまま、内部で破裂させる、あまり同じ表現を見たことのないような演じ手です。 面白い人ってたくさんいます。 それが自分の芝居に集まってくれていることが愉悦です。

●で、今日は2回目のスタッフ見せ通し稽古。 ここらで一旦、芝居は仕上がるでしょう。 といったところで、初日までいよいよ、一週間となりました。 えー、本日9日金曜の23時59分までで、銀行振り込みでの前売り受付が締め切られます。 申し込んでしまえばね。 お支払いは、14日までで大丈夫ですので。 是非、お願い致しますね。 クレジットカードでお支払いの方は、14日まで前売り料金で大丈夫です。 ボチボチ、お願いします。 写真は令和のキャッツアイです。 では、また。
(主筆)


MEMO♯099【インテグラルの踵は錆びない26】
2020年10月12日

●9、10、11日と仕上げの稽古にまい進しておりました。 3日で2回の通し稽古をしまして。 上演時間もギュギュっと閉まって、休憩10分含め1時間45分。 カーテンコールや場内整理時間も含めて1時間50分としておきますが。 それを零れることはありません。 大したもんです。

●決して、戯曲の文字数が少ないわけではありません。 5万5千文字程度、かつては2時間に迫っていた内容です。 それが内容としては、実質、1時間35分。 俳優の自力によって、10年間、欲しかったテンポに今、やっと辿り着いた感じです。 地球上で最も濃縮された95分間です。 脳みそウニウニして、楽しいですよ。

●ハイスピード稽古以降、俳優が、自分のセリフを、前の人のセリフの間に「差し込む」感覚を知った感じです。 集中力が高まって、その結果、作品に入り込みすぎて、台詞がポーンと飛ぶこともありますが それは決して、悪いトチリではありません。 俳優は、地獄ですけどね。 台詞が飛んだ俳優の、舞台上での時間は、1秒が10分です。 舞台が終わった後、白髪になる俳優もいるでしょう(いない)。 台詞を設置する感覚では、三枝さん、樋口さんが、抜けた感覚を持ってます。 言葉が、ペタっ、ペタってついてくる感じ。 ピョンピョンしてないんですよね。 ビートでいうと、表拍。 しっかりと刻んでくれるから、岩松や木村くんが、裏拍を気分よく入れてくれる感じです。 いい感じにバラバラのアンサンブルが出来ました。 この感覚を、一生、味わっていたいけど、哀しいかな、本番は目前です。 もうすぐサヨナラです。 完成度が高まるほど、喪失もまた目前に迫る。 演劇って不毛で、ステキです。

●出演者の一人、こばやし帝国さんが グラフィックデザインの仕事で、何やら、素晴らしい賞に入選したとの噂を聞きつけまして。 部屋に転がっているアマゾンギフトカード3000円を引っ掴み、稽古場で、「賞金」として進呈しました。 今夜はすき焼きだ、と告知された昭和の子供みたいに喜んでくれました。 眩しい才能です。 私は、兼業俳優が好きです。 さまざなな価値観を、作品にもたらしてくれるガラパゴス野郎の集まりでアパッチ野球軍したいと思います。 演技もイイですよ。 突拍子もない感情の幅を見せてくれて、タマゲます。

●一昨日の稽古では、一部の俳優に対しての私の圧が強すぎ、ハラスメント傾向にあったことを反省し、 一晩考えて、昨日の稽古前、全体に謝罪しました。 私は本来、まったく、理性的でも倫理的でもない人間です。 それを、知性と理性でなんとか抑え込んでいるのです。 だから、一瞬、タガが緩んだときが恐ろしい。 稽古場は学校でも家庭でもなく、俳優は演出家の家族でも部下でもない。 当然のことを、当然として、性分ではなく、理性的なふるまいによって、律していかなくてはいけない。 人を傷つけてまでやる創作に、私は興味がありません。 だからきっと、私は芸術家ではない。 それでケッコーです。 ま、誰も、私を芸術家などとは呼びませんけどね。 私も、呼びません。 わはは。

●そんなわけで、今日はなんと、稽古休み。 明日、最終の通し稽古を一発やって、それで稽古は打ち上げです。 この14年間で、最も完成度の高い芝居を、最も余裕をもって作れました。 ま、稽古は稽古。 明後日は小屋入りで、木曜から開演です。 また、違ったアソビを楽しみます。 お陰様で、なんとか客席は埋まってきました。 もう一押しね、なんとか、ドーゾよろしく。 写真は新手のスタンド使い(遠距離操作型)です。 では、また。
(主筆)


MEMO♯100【インテグラルの踵は錆びない27】
2020年10月22日





●え、ども。 そんなわけで、公演が終わってしまいました。 このメモは稽古メモですので、稽古がないと更新されません。 最後に書いたのが、最終通しの一日前、小屋入り2日前ですね。 最終日は順調に、淡々と通しを終えて、それで小屋入りしました。 3か月間、全32回の稽古。 通し稽古は全部で7回。 こんなにも順調に、そして満足いくまで作品を作れたことは、14年間の劇団活動で初めてでした。 最初は、永久に来ないと思っていた10月も、あっという間に過ぎ去って、もう1年も終わりの気配を見せています。 2020年、この一作を、このメンバーで作れたことが誇りです。 そして、「インテグラルの踵は錆びない」の戯曲は、私と劇団の財産となる作品です。 一行も妥協せず、書き、演出することが出来たからです。 この作品を、例えば戯曲賞などに出しても、おそらく一次選考落ちでしょう。 でも私は、この作品が世界で一番、面白いと実は本気で信じています。 まあ、おめでたいことですが、おめでたくない奴は芝居なんて書きませんから。 私は、芝居でしかない芝居を作りますし、自分にしか絶対に書けない作品しか書きません。 残念ながら、自分だけの基準で書いたものを、その基準の外にいる人にまで納得させるほどの才能はありません。 そういう人もいますが、埒外の能力です。 私は、そういう者にはなれませんが、だからと言って他の書き方ができるわけでもない。 真面目に、テキトーに、これからも書きます。

●心配された動員も、フタを空けてみればほぼ全ステージ満席。 金曜は空きが出ましたが、それでも合計で95%以上の満席率となりました。 すべては俳優が、粘り強く宣伝してくれたお陰です。 人気も知名度もない劇団ですから。 俳優の「これは観てほしい」という熱意が頼みの綱、の現状です。 今回、感染症対策下の公演となり、席数は常時の半分でしたが、 ご来場下さったお客様との心の密度は倍以上のものでした。 お気に召した方も、そうでない方も、本当にどうもありがとうございました。

●そんな理由で、俳優はご来場下さったお客様への「お見送り」ができませんでした。 代わり、と言ってはナンですが 明日金曜と明後日土曜、19時~22時にかけて、私と俳優が今回の芝居について話しつつ、お客様にお礼を申し上げます「お見送り放送」をネット配信にて行います。 制作の永井が、なにやらそのような事が可能なシステムを構築してくれました。 すげー時代です。 おおむね90分ずつ、4回に分けて俳優を入れ替えつつ放送する予定であります。 ダラダラとしたムードでまったりやるつもりですが、ご都合合う方は、怖いモノみたさでどうぞお付き合いください。 あと、あけたらしろめ画伯イラストの公演Tシャツと、今回の上演記録映像(全篇)付きの製本台本も売っております。 こちらは、完全受注生産でして、もう二度と作られることはありませんので。 どーぞ、ヨロシク。 といったあたりで、今回のメモはオシマイです。 ちょうど100回目でキリがいいすね。 また次の未来でお会いしましょう~。 生き延びましょうね、 そんじゃ、さよーなら。
(主筆)